百合ちゃん、優しさの温もり
生後半年後のことを覚えている、と言って兄にたしなめられた、と書きましたが、これもまた、私の中のとても古い記憶です。
私が幼少の頃、私の家の近くに、島崎さんという、母娘二人だけで暮らす家庭がありました。
娘は百合ちゃんといって、その当時十代後半ぐらいの年頃でしたが、今で言う知的障害者でした。
幼い私は、この百合ちゃんにとても可愛いがられて、いつも背中におぶられていました。
百合ちゃんの背中は広くて暖かく、とてもいい匂いがしました。
母も、百合ちゃんが私の面倒を見てくれるので、とても助かっていたと思います。
百合ちゃんは多分、私のことを、熊か何かのぬいぐるみのように思っていたのではないか、と思います。
今でも、「赤トンボ」や「夕焼け小焼け」の歌を聞くと、百合ちゃんの温かい背中を思い出します。