癌研の待合室
癌研とは癌研有明病院の事です。
今から10年ほど前、大腸ガンを患ってお世話になりました。
癌研と言うぐらいですから、そこの患者さんはすべてガン患者かその恐れがある人ばかりです。
その待合室。
各部屋には、担当の先生の名札がかかっており、その前で待つのですが、必ずといって良いほど、待たされます。
最初に行ったのは、日大板橋病院でガンが発見され、紹介状を持って行きました。
その後は、手術の打合せと、術後検査の時です。
その待合室で待たされると、必ず、いろいろな妄念が涌いてきます。
これだけ待たされるのは、何か重大な事が発見されて、その準備をしているのではないか?とか。
ところが、私の場合はお陰様で、だいたい何事もなく、先生から、待たせてごめんなさい、と言われるだけなのですが……。
退院後、5年間、3カ月おきに行くのですが、行くたびに同じような妄念が涌いて、どうしても待つことに慣れることができませんでした。
そこで待っている人はすべてガン患者です。
中には同じ集中治療室に入った人とか、顔なじみがいます。
ああ、まだあの人も生きている、失礼な話ですが、そう思うとホッとします。
その人も、私を見て、きっとそう思っているに違いありません。