アルカリガラスの味わい

またまた次兄の話で恐縮です。

次兄は前立腺癌で数年前に亡くなったのですが、病気になる数年前のこと、定年退職して、悠々自適となったところに、一度ご機嫌伺いに行きました。

すると、お前だけに宝物を見せてやると言って、やおら台所の板の間に座り込んで、羽目板を外し、長いこと縁の下をまさぐっていましたが、やがてオレンジの花弁のような色が溶け込んだ花瓶を引き揚げて、板の間の上に置きました。

「どうだ、すごいだろ、これは俺が若い時にガラス工場で吹き上げたもんだ」

そういうと、ためつすがめつ、花瓶を見つめていましたが、やおらまた、縁側の下に首を突っ込んで、しばらくガタゴトやっておりましたが、今度はビールジョッキより少し小ぶりのコップを三つほど引き出しました。

「今はみんなクリスタルガラスがいいとか言うが、あれはあれで冷たいし、欠けるし、やっぱりアルカリガラスの方がいい」

見ると、コップの縁が飴色になっています。それもアルカリガラスの特徴で、使えば使うほど良くなるのがアルカリガラスとのことでした。

私も長い年月生きてきましたが、アルカリガラスのような味わいは出てきたでしょうか？