焚き火ばた会議
井戸端会議ならぬ、焚き火ばた会議というのが昔はあったのです。
消防署のお達しで、今はもう都内で焚き火を見ることはありませんが、私が小学生ぐらいまでは、焚き火はそこかしこで、普通に見られた光景です。
特にその当時の品川は海苔の生産地でしたので、海苔の乾燥のために、海苔干し場の前で、毎日焚き火が焚かれていました。
もちろん私たち子供も焚き火に当たるのですが、どういうわけか、女性は焚き火の輪に加わりません。
近所の漁師のおじさんたちが集まって、だいたいは世間話をしながら火に当たっています。
焚き火ばた会議です。
焚き火に当たっている方は暑いぐらいになるのですが、当たってない方は、スースーして寒くて仕方ありません。
そのため、おじさんたちは一言面白いことを言うと、くるりと後ろを向いてまた面白いことを言い、またくるりと前を向いて面白いことを言うという具合でした。
そのくるりがちょうどいい間になって、焚き火ばた会議はいつまでも続きました。