江戸前クジラ、東品川に眠る
これもまた、大昔の話で、私がまだ小学校に上がる前の話、昭和で言うと、昭和20年代後半から30年代前半の話です。
旧東海道から降りて来て、品海橋を渡ってすぐ左に曲がると、弁天様の小さな神社があります。
子供たちのいい遊び場で、朝から晩まで、誰かしら遊びながら、仲間が集まってくるのを待っていました。
今言うと、誰も信じてくれませんが、その時の私の格好は、カスリの着物に足袋と下駄という出で立ちでした。
いまだに、私の両足の親指と隣の指との間には、下駄の鼻緒を挟んだ後が穴のようになっています。
ある日、その弁天様で遊び疲れた私は、ふと金魚の池のほとりに、三角形の石碑のようなものを見つけて、管理人さんにあれは何だ?と尋ねました。
すると、管理人さんは、あれは鯨塚だと教えてくれました。
江戸の昔に鯨が江戸湾に迷い込んだときに、地元の漁師が船を出して生捕りにして、肉を将軍様に献上したのだそうです。
幼い私はあんな汚い東京湾を鯨が泳いで来たのかと、気持ち悪くなったのを覚えています。