arasan1951’s blog

69年間の人生の叡知!森羅万象に物申す

芸大保健センターの顕微鏡の中の胎児の顔

オイルショックの中、ようやく就職した小さな出版社の社長に連れられて、初めて訪れた芸大保健センターの三木成夫先生は、挨拶もそこそこに、私を部屋の片隅に置いてある顕微鏡の前に連れて行きました。
そこには何人か、美術学部の学生がいて、顕微鏡の中を見て、何やらスケッチしています。
三木先生は学生たちに声をかけて、場所を空けさせると、顕微鏡の中を見てみるように私を促しました。
言われるまま中を除いた私は、あまりの衝撃でその場に氷付いてしまいました。
顕微鏡の中で私が見たのは、人の顔であるように見えましたが、人の顔とはほど遠い、何か化け物ででもあるかのような顔でした。
これは人間の胎児の顔で、受胎から丁度30日ぐらいで、魚類から、両生類になりかかりの頃で、目が側頭部からだんだん前に出てきて、哺乳類の特徴である前面に落ち着く。
いや〜、この標本を手に入れるのは、大変だったんじゃ、と三木先生はおっしゃいましたが、こちらはそれどころではなく、そのあとどんな話をしたかも覚えていないくらい動揺しておりました。
思えばこれが三木先生との初対面でしたが、後で会社の人に聞くと、悪戯ずきの先生は、いろんな人間にこの顕微鏡を見せて、その反応を楽しんでいたそうです。
なるほど、解剖学者というのは、悪魔の血が流れているのかもしれません。